黒字決算なのに会社にお金が残らない理由|利益と現預金の違いを社外CFOが解説

黒字決算なのに会社にお金が残らない理由を示す資金の流れの図解

「決算では利益がちゃんと出ているのに、口座の残高は増えていない。。。。」

「消費税と法人税を払ったら、ほとんど手元に残らへん。。。。」

「毎年黒字やのに、なぜか銀行借入が減らない。。。」

こうした疑問をお持ちの経営者は少なくありません。

ちゃんと利益が出ているのにお金が残らないと、

「もっと売上を増やさないとあかん」
「経費を削減しないといけない」

と考えてしまいがちです。

でも、その原因が売上不足や経費の使い過ぎにあるとは限りません。

会社のお金は、決算書の損益計算書だけでは分からない部分も動いています。

売掛金、在庫、設備、借入金の返済など、決算書の貸借対照表に表れる項目へ移っていることも多いのです。

つまり、お金が消えたのではありません。

現預金が、会社の資産や借入金の返済へ姿を変えているのです。

なので、(決算書の損益計算書の)利益だけを見ていると
「黒字やのに預金残高が減る」という、
一見すると分かりにくい状態が起こります。

黒字決算なのに会社にお金が残らない理由を整理し、利益がどこへ動いているのか、
社長が最初に確認したいポイントを解説します。

この記事の結論

黒字なのに会社にお金が残らない主な理由は、決算書上の利益と現預金の動きが異なるのが原因です。

消えたキャッシュは、
売掛金、在庫、借入金の元金返済、設備投資、税金、保険、運転資金などに、流れている可能性があります。

利益の額だけでなく、「利益が最終的にどこへ行ったのか」を確認していただくことが大切です。

【目次】

  1.  利益の増減と現預金は同じものではない
  2.  会社の「手取り額」を把握する
  3.  黒字なのにお金が残らない7つの理由
  4.  お金が残らない原因は決算書のどこを見るのか
  5.  利益を現預金として残すための改善手順
  6.  会社の数字を自分でも整理したい方へ
  7.  まとめ|利益の額より、お金の行き先を見る

利益の増減と現預金は同じものではない

まず押さえておきたいのは、利益の増減と現預金はイコールではないということです。

利益は、売上から仕入、人件費などの経費を差し引いて計算します。

一方、現預金は、実際に入金されたときに増え、支払ったときに減ります。

たとえば、

3月に1,000万円の商品を販売し、入金が5月末だったとします。

会計上は3月に売上が計上され、利益にも反映されます。

でも、5月末までは会社に現預金が入ってきません。

その間にも、仕入代金や給与などの支払いは発生します。

反対に、銀行から1,000万円を借りれば現預金は増えますが、売上でも利益でもありません。

このように、損益計算書と通帳では、お金が動くタイミングも意味も違うんです。

決算書が黒字かどうかは、もちろん大切です。

でも、会社の経営判断に使うには、利益の額だけでなく、利益が最終的にどこへ動いたのかまで見る必要があります。

毎月、税理士から試算表の説明を受けていても、資金繰りの不安が消えないことがあります。

それは、税理士の説明が間違っているからではありません。
税務申告のために確認する数字と、社長が経営判断に使いたい数字には、少し違いがあるからです。

税理士、経理担当者、社外CFOの役割の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:税理士がいるのに財務の悩みが消えない理由

会社の「手取り額」を把握する

ぼくは会社のお金を考えるとき、経営者に対して「会社の手取り額」という表現を使うことがあります。

給与には、額面金額と手取り額がありますよね。

会社も同じように、決算書に記載された利益のすべてを自由に使えるわけではありません。

会社が生み出した現金の大まかな目安は、次のように考えます。

会社の手取り額の目安=税引後利益+減価償却費

減価償却費は、
設備や車両などの購入代金を、会計上、複数年に分けて経費にするものです。

購入したときには現金を支払っていますが、その後、毎年計上される減価償却費と同じ金額が現金で出ていくわけではありません。

そのため、会社が現金を生み出す力を見るときは、税引後利益に足し戻して考えます。

たとえば、

税引後利益が600万円、
減価償却費が300万円なら、

会社の手取り額の目安は900万円です。

ところが、この900万円からは、借入金の元金返済、設備投資、保険や銀行積立など、経費に計上されない支出が出ていきます。

年間の元金返済が1,200万円、積立型の生命保険が200万円なら、

900万円-1,200万円-200万円=マイナス500万円

です。

決算書は黒字でも、現預金は年間500万円減る計算になります。

この不足を新しい借入で補えば、毎年きちんと返済しているのに、借入残高がなかなか減らない状態になります。

もちろん、実際には売掛金や在庫の増減、設備投資なども合わせて確認する必要があります。

ただ、最初の健康診断としては、

会社の手取り額より、経費にならない支出の方が多くなっていないか

を見るだけでも、かなり状況をつかめます。

※「会社の手取り額」は、資金の流れを理解するための簡易的な目安です。実際の資金繰りを判断する際は、売掛金、在庫、買掛金、設備投資、税金などの増減も確認します。

黒字なのにお金が残らない7つの理由

1.売上が売掛金のまま残っている

商品やサービスを提供しても、入金が済むまでは現預金になりません。

売上が増えていても、回収までの期間が長くなれば、売掛金として社外にお金が滞留します。

特に注意したいのは、売上の伸びよりも、売掛金の増え方が大きい場合です。

取引条件が悪くなっている、入金が遅れている、回収管理ができていない可能性があります。

これは利益の問題ではなく、回収の問題です。

2.在庫でお金が寝ている

在庫は商品なので、必要な量を持っていれば営業上の強みにもなります。

でも、お金の視点では、現預金が商品や材料に姿を変えて、倉庫で寝ている状態です。

売れる予定、使う予定で仕入れたものが長期間残ると、現金化できないだけでなく、保管費用、劣化、紛失、値下がりなどのリスクも生じます。

売上や利益だけでなく、

  • 在庫が何か月分あるのか
  • 長期間動いていないものはないか
  • 売上の増加以上に在庫が増えていないか

を確認する必要があります。

原材料の供給不安や円安が続く局面では、欠品を避けるために在庫を増やしたい判断もあります。

在庫を減らせばよいとは限りませんが、資金繰りへの影響まで見たうえで、意図的に持つことが大切です。

3.借入金の元金返済が手取り額を上回っている

銀行への返済は、元金と利息に分かれます。

利息部分は経費ですが、元金返済部分は経費ではありません。

そのため、損益計算書には、元金返済による現預金の減少が表れません。

税引後利益と減価償却費を合わせた金額より年間の元金返済額が多ければ、ほかに大きな変化がなくても現預金残高は減っていきます。

この場合に必要なのは、単純な利益改善だけではありません。

借入金の使い道、調達方法、返済期間、年間返済額が、会社の収益力に合っているかを見直す必要があります。

借入金を早く返したいと考えるのは自然です。

ただし、返済期間を短くしすぎた結果、手元資金が減り、再び融資を受けるのであれば、本当に借入金が減っているとはいえません。

4.設備投資を自己資金で払いすぎている

機械、車両、店舗設備、システム、不動産などを購入すると、まとまった現預金が出ていきます。

でも、会計上は多くの場合、購入した年に全額が経費になるわけではありません。

数年に分けて減価償却するため、損益計算書には利益が残っていても、通帳からは大きなお金がなくなっていることがあります。

設備投資が悪いわけではありません。

事業を成長させるためには、必要な投資もあります。

ただ、投資を決める前に、

  • 投資後も運転資金が不足しないか
  • 投資額を何年で回収できるのか
  • 自己資金と融資をどう組み合わせるのか
  • 売上が計画を下回っても耐えられるか

をシミュレーションする必要があります。

5.税金の支払いを資金計画に入れていない

利益が出れば、法人税などの支払いが発生します。

さらに、消費税は利益とは別の仕組みで計算されるため、決算後の大きな資金負担になることがあります。

もちろん、税金は突然発生するものではありません。

業績を毎月確認し、決算予測ができていれば、ある程度は事前に見込めます。

それでも支払月になって慌てる会社が多いのは、利益予測と納税資金の準備がつながっていないからです。

納税見込額を毎月確認し、使ってよいお金と納税用のお金を分けて考えるだけでも、決算後の資金不足は防ぎやすくなります。

6.保険や積立などに現預金が固定されている

節税や将来の退職金準備を目的に、生命保険や銀行積立を利用している会社は多くあります。

目的に合っており、資金に余裕があれば問題ありません。

一方で、手元資金が不足して金融機関からの借入を増やしているのに、毎月多額の積立を続けている場合は注意が必要です。

見た目上は資産が残っていても、必要なときに自由に使えないことがあります。

途中で解約すれば、元本割れする場合もあります。

さらに、その積立の原資を銀行融資で賄っていれば、借入金の利息や保証料も負担しています。

節税効果だけでなく、資金調達のコストまで含めて、本当に会社にとって有利なのかを精査する必要があります。

7.売上の成長に運転資金が追いついていない

売上が伸びると、仕入、外注費、人件費、在庫、売掛金も増えます。

入金より支払いが先に来る商売では、成長するほど会社が立て替えるお金が増えます。

そのため、黒字で成長している会社ほど、資金不足になることもあります。

これは業績が悪いからではありません。

成長に必要な運転資金を、事前に準備していなかったことが原因です。

売上目標を決めるときは、利益計画だけでなく、

その売上を実現するまでに、いくら先に支払う必要があるのか

までシミュレーションする必要があります。

たとえば、

売掛金5,000万円+在庫1,000万円-買掛金3,000万円=必要運転資金3,000万円

という会社であれば、今の売上規模を維持するために、3,000万円の立て替え資金が必要だと考えます。

売上が伸びれば、必要運転資金も増える可能性があります。

このお金を毎月返済する条件の融資で調達していると、返済するたびに必要な運転資金が不足し、また借りるという状態になりやすくなります。

※必要運転資金は、業種、取引条件、季節変動などによって異なります。上記は考え方を理解するための一例です。

お金が残らない原因は決算書のどこを見るのか

利益が出ているのにお金がないとき、損益計算書だけを何度見ても、原因が分からないことがあります。

お金の行き先を確認するには、貸借対照表を前期と比較してみてください。

視点はシンプルです。

売掛金が増えていれば、回収前のお金が増えています。

在庫が増えていれば、商品や材料に変わったお金が増えています。

固定資産が増えていれば、設備などへの投資にお金が動いています。

借入金が減っていれば、元金返済にお金を使っています。

買掛金が減っていれば、仕入代金などの支払いにお金を使っています。

要は、

前年より増えた資産と、前年より減った負債を見ると、利益がどこへ流れたのかを追いやすくなります。

でも、決算書は一年間の結果です。

経営判断に使うのであれば、年に一度ではなく、月ごとに変化を見るのが理想です。

「今月は利益が出たか」だけでなく、

  • 売掛金は増えすぎていないか
  • 在庫は動いているか
  • 返済後に現預金は残っているか
  • 買掛金の増減はどうなっているか
  • 今後の納税額はいくらか
  • 投資に使えるお金はいくらあるか

まで確認して、初めて数字を経営に活かせます。

同じ「黒字」でも、会社の状態によって確認する数字と検討すべき対策は変わります。

こうしたお金の流れは、日々の資金繰りだけの問題ではありません。

事業承継やM&Aを考える場合も、利益だけでなく、現預金、借入金、個人保証、設備、保険などを含めて、会社の現在地を整理しておく必要があります。

後継者や買い手に会社を引き継ぐ直前になって整理しようとしても、選べる対策は限られます。

関連記事:事業承継でM&Aを選ぶ前に|売却条件より先に整理すべき会社・家族・PMI

利益を現預金として残すための改善手順

お金が残らないからといって、いきなり経費削減から始める必要はありません。

まずは、直近一年で現預金がどこへ動いたのかを整理してみてください。

確認する順番は、次の5つです。

  1. 税引後利益と減価償却費から、会社の手取り額の目安を出す
  2. 年間の借入元金返済額と比較する
  3. 売掛金と在庫が前年より増えていないか確認する
  4. 設備投資、保険、積立などの大きな支出を並べる
  5. 数か月先までの税金と現預金残高をシミュレーションする

ここまで整理すれば、要因の見立てができます。

利益が不足しているのか。
回収条件に問題があるのか。
在庫が増えすぎているのか。
返済条件が重すぎるのか。

原因が売掛金なら、回収条件の見直しを検討します。

在庫が原因なら、仕入方法や棚卸しの運用を見直します。

返済負担が大きいなら、返済期間や借入構成について、金融機関との交渉が必要です。

原因が異なれば、改善策も変わります。

原因を確認しないまま、

「もっと売上を増やそう」
「経費を削ろう」

と盲目的に進めると、資金繰りが余計に苦しくなることもあります。

会社の数字を自分でも整理したい方へ

ここまで読んで、

「自社の数字でも一度確認してみよう」
「決算書をもう少し経営に使えるようになりたい」

と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

会社の数字を経営者向けにどう整理すればよいのかは、拙著『利益を3倍アップさせる!中小企業経営者のための「会社の数字」入門』でも解説しています。

決算書の勘定科目を覚えるための本ではありません。

会社の現在地、手取り額、借入金のバランス、お金の流れを、できるだけ会計用語を使わずに理解していただくための本です。

まずは自分で基本的な考え方を知りたい方は、参考にしていただければと思います。

『利益を3倍アップさせる!中小企業経営者のための「会社の数字」入門』の書影
数字が苦手な中小企業経営者のためのファイナンス入門

「書籍の詳細を見る」

まとめ|利益の額より、お金の行き先を見る

利益が出ているのに会社にお金がないとき、決算書が間違っているとは限りません。

現預金が、

  • 売掛金
  • 在庫
  • 借入金の返済
  • 設備投資
  • 税金
  • 保険や積立
  • 売上拡大に伴う運転資金

へ動いている可能性があります。

大切なのは、「利益がいくら出たか」だけで終わらず、

その利益は最終的にどこへ行ったのか

を確認することです。

会社にお金を残すには、利益を増やすだけでなく、回収、在庫、投資、返済のバランスを整える必要があります。

ただし、実際にお金が残らない原因は会社ごとに異なります。

「黒字なのに借入が減らない」
「決算後に税金を払うと資金がなくなる」
「売上は伸びているのに預金が増えない」
「利益の説明は受けたが、お金の行き先が分からない」

こうした状態であれば、損益計算書だけで判断せず、会社全体のお金の流れを一度整理してみてください。

自社の場合を整理したい方へ

原因が売掛金にある会社と、返済条件にある会社では、取るべき対策がまったく違います。

UKパートナーズでは、決算書を評価して終わるのではなく、

  • 利益がどこで別の資産に変わっているのか
  • 返済や投資の条件が会社の実力に合っているのか
  • 今後どのタイミングで資金が不足するのか
  • どの対策から優先して着手すべきか

を、経営者の方と一緒に整理しています。

ご相談いただいたからといって、すぐに借り換えや経費削減をおすすめするわけではありません。

まずは会社の現在地と、お金が残らない原因を確認したうえで、今すぐ対応すべきことと、しばらく様子を見てもよいことを分けていきます。

問題が深刻になってから資金を集めるより、黒字のうちにお金の流れを整える方が、選べる対策は多くなります。

自社の場合を一度整理してみたい方は、セカンドオピニオンとしてご相談ください。

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